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小林よしのり
2016.9.22 00:43政治

天皇陛下と石原慎太郎の格差


石原慎太郎が都知事時代は書類渡されたら何でもハンコ

推していたと言っている。

「めくら判」(差別用語らしい)押していたと言うのだ。

 

天皇陛下はそうではない。

法案に御璽を押すときは、しっかり目を通しておられる。

それは「シラス」(お知りになる)天皇だからだ。

法案を見て拒否はできないが、日本のこと、国民のことは

知っておかなければならないと思われるのが天皇陛下だ。

 

石原慎太郎は生前退位の報を聞いて、「私は陛下より一つ

年上だが、それでも頑張っている。本当に陛下には、もう

ちょっと頑張っていただきたい」と上から目線で忠告

した。

 

だが石原は都庁時代も週に数日しか出勤していない。

自宅で小説を書く自由を満喫していたのだ。

 

天皇陛下は、祭祀も、国事行為も、公務も、すべて全身全霊

で打ち込まれる。国民のために!

気力も体力も疲れるのが当たり前だ。

 

石原はもともと「皇室には興味はない、国家は歌わない」

と言っていた。

仕方なく歌うときは、「わがひのもとは」と歌詞を替えて

歌うと自慢そうに言っていた。

尊皇心などひとかけらもない者を、自称保守論壇が重宝

していたのも実に不思議だ。

 

誰だって歳はとる。

石原慎太郎の歩き方を見ると本当に年取ったなと思う。

ぽてぽてぽて・・と完全に老人の歩き方だ。

もともと体格もいいし、若いころヨットに乗って健康的な

姿を誇示していた父権主義者も、80歳過ぎれば、自然に

歩くこともできなくなる。

 

引き際を心得ないと老醜をさらすことになる。

天皇陛下はそこを分かっておられる。

わしは老いぼれたら世間には出ないようにしようと思って

いる。

だがそれは美意識だ。

 

陛下の場合は美意識を守るという「私」的な感情からの

生前退位ではない。

天皇は「無私」である。「公」の体現者である。

陛下が退位したいと仰るときは、それが「公」に適うと

いうギリギリの判断があったからだ。

 

そこが保守モドキ、尊皇モドキの馬鹿どもには分かって

いない。

自分の「公心」が薄すぎて、陛下のご真意を察すること

などできないのだ。

 

陛下の生前退位が徹底的に「公心」であり、国民のため

であることを、尊皇モドキは分かってない。

陛下が十全に満足されるルール変更に、政治家は挑戦

せねばならない。

「とりあえず特措法で天皇だけ退位させちゃえ。」

「とりあえず特措法で新天皇も即位させちゃえ」

「そのためには皇室典範に、ちゃちゃっと、抜け穴に

なる条文を加筆しちゃえ」

こんな態度は「私心」の極致であって、「公」に適う

ことではない。

 

政治家に「公心」があるか否かが問われている。

 

小林よしのり

昭和28年福岡生まれ。漫画家。大学在学中にギャグ漫画『東大一直線』でデビュー。以降、『東大快進撃』『おぼっちゃまくん』などの代表作を発表。平成4年、世界初の思想漫画『ゴーマニズム宣言』を連載開始。『ゴーマニズム宣言』のスペシャル版として『差別論』『戦争論』『台湾論』『沖縄論』『天皇論』などを発表し論争を巻き起こす。
近刊に、『卑怯者の島』『民主主義という病い』『明治日本を作った男たち』『新・堕落論』など。
新しい試みとしてニコニコ動画にて、ブロマガ『小林よしのりライジング』を週1回配信している。
また平成29年から「FLASH」(光文社)にて新連載『よしりん辻説法』、平成30年からは再び「SPA!」(扶桑社)にて『ゴーマニズム宣言』、「小説幻冬」(幻冬舎)にて『おぼっちゃまくん』を連載開始し話題となっている。

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